崇武レポート  
2004年12月
2004年9月12日から12月10日まで崇武に住んで石材工場取材をした結果を報告します。
 前回の厦門滞在で60社近くの会社訪問を終えていますので今回は合計で200社になるように目標を立てていました。
予定では三ヶ月の滞在ですので一月約50社の訪問予定です。一日2社のペースで訪問できればどうにかなりそうな数字でした。現実には二ヶ月間で125社の訪問が出来ましたので比較的簡単に目標達成できるかと思いましたが、あと残っている会社の訪問はかなり難しいものがありました。崇武鎮から出ればたくさん有るのですが出来る限りここでの調査を希望していましたので訪問数は減っても仕方ないと思いました。
 崇武鎮には約300社の石材会社があるようですがその内大規模会社は100社前後のようで看板の無い会社がたくさんあります。当然輸出には直接関係なくほとんど下請けの会社です。このような会社では直接日本人が訪問することをあまり好まないと言うか関係ないから対応が悪くまた調査してもあまり大差無いので調査の意義がないように思えました。 この間に4000枚以上の写真とアンケートを取りましたので報告します。
 まず今回の私の目的について誰もが理解できなかったことです。このことは日本においても同じことと思いますが詳しい説明は難しいので簡単に言いますと勉強のために来ただけです。全て自費で時間と労力を使っていることがまた商売をしていないことが理解できないようでした。大学で勉強しても学費がいるのだから自分で勉強するのに費用がかかっても当然と思うのですが。情報にはお金がかかるものです。無料の情報にはいいものは少ないと思っています。情報を集めて分析し、対策を講じるのが筋道ではないでしょうか。
 今の日本の石材業界は中国からの石材輸入無くしては成り立ちません。ところが、どれほど多くの人が中国の石材業界の現状を認識しているのでしょうか。中国からの情報発信は誰がしているのでしょうか。此処にも当然いろいろな考え方の経営者がいますし、会社の規模も違います。これをもって中国だとは言えませんが日本とはかなり違うと感じました。当然日本の常識が通用するはずも無く此処には此処の常識があり、それを理解しないと此処を理解することは難しいと思います。
 ホームページ(stonelife21.com 中国の石材関連会社)の見方ですが、最初にアンケートの部分があります。この部分と写真が下部に有りますので双方を比較して判断してください。 アンケート内容は全て自主申告のものです。アンケートの内容が無いものもありますがさまざまな理由で回答を得ることができませんでした。
以下は会社訪問をして感じたことをまとめてみます。

@ ほとんどの会社が日本向けの製品を作っている。 他に韓国向けの製品が目立っていたが、台湾、ヨーロッパなどは少数   派でした。

A 商社からの受注が大部分を占めている。 直接日本の会社と取引しているのは少数派でほとんどの会社が貿易商社の仕  事をしています。 そのためか、日本語対応が出来ない会社がほとんどですが、通訳を置くと商社からの受注が無くなるの  ではないかという心配もあり、また、通訳の人も都会での仕事を希望するため崇武には来ないのも原因のようです。

B 今年の受注量は過去最低の会社が多い。

C 売上金の回収に不安を持っている会社が多い。 ほとんどの会社に売り上げ未収金が有るようだ。近年特に多いようです  。原因に付いては当事者双方の話を聞かないと分かりませんが少なくとも工場側としては被害者の意識があります。この  ことは中国人の面子(私にはなかなか理解できない)の考え方がありなかなか表には出て来ないようです。日本人の評判  も悪くなっているようです。

D 税務署を恐れている会社が多い。 税務署の職員は自分のノルマ達成しか考えていないようで会社の事情に関係なく徴   税しようとするようです。納税のために会社が倒産しても我関せずの姿勢のようです。売り上げに対しての税金があり経   営内容に関わらず納税の義務があるようです。

E 経営者が会社にいないことが多い。 私の都合で午後2時からの会社訪問でしたがほとんどの経営者はその時間に会社  にいないことが多かった。中国では一般に昼寝の時間があり昼休みの時間は2時間取っています。これは一つの習慣で  すが残業があることを思えば少しは納得できます。でも、もう少し時間を守ってもらいたかったものです。このあたりに基   本的な問題がありそうです。

F 製品精度を高めれば競争に勝てると考えている。 ほとんどの工場の経営者は日本の要求はよく知っていると言うが私が  感じたところではほとんど何も知らない。製品精度、納期、低価格などの一般的な要求に関しては熟知しているが日本の  歴史、文化、習慣などの日本の市場を理解するために必要なことはほとんど知らない。現在発展している会社は日本市  場に詳しい会社である。

G 日本市場に失望して他の市場への転換を考えている会社がかなりある。 韓国市場開拓に力を入れている会社が多くな   っているようだ。韓国の墓は使用才数も多く要求も日本ほど厳しくないため工場の稼働率を上げるためには魅力があるよ  うだ。しかし、信用や低価格などの問題があるようだ。欧米の話はよく聞くが実際に製品として見たのは非常に少なかっ   た。ほとんどが建築材だろう。

H 現状の工場数は多過ぎると考えている。 受注量の減少、価格低下などの原因は供給過剰であると考えている。工場数   が半分になればいいと考えている経営者もいる一方で新設の工場が出来ている。しかし、政府の投資抑制策の影響で   資金調達が出来なくなり中断中の会社もある。

I 訪問した会社全てにコンピュウターがありADSLを使用している。 OSは98が主力。しかしながら、日本語対応していない   会社も多く日本語IMEの設定をしました。不思議なことにどこの会社もOSのCDデスクを持っていませんでした。もう少しネ  ットワークをうまく使えば経費を掛けずに情報交換ができると思いました。どちらかと言うとこの分野では日本の方が遅れ  ているように思えました。

J 報告できないことがたくさんある。 この他、個々の問題になると非常に様々な問題がありこれらの解決には相互理解が   ないと難しいと思います。最初に触れましたように歴史、文化、習慣、環境などからくる考え方の違いは、相互交流を続け  ないと解決は難しいと考えます。特に交流の場の必要性を感じました。しかしながら、経営者の多くは他社のことを信頼   していません。崇武の経営者は崇武の工場は全て知っていると言いますが他社を紹介して貰えたのはほんの数社しか   ありません。隣の工場のことでさえ付合いがないようです。
  幸いにも大学を卒業した後継者が出てきています。ホームページを見た福州大学の生徒から会見の申し込みがありまし  た。彼は石屋の子弟で日本語は話せませんがその熱意は伝わるものがあります。私が今住んでいた所も以前にコンタク  トを取ってきた学生の家です。
 30数年前庵治産地に青年部ができ同業者間の関係が大幅に向上したことを顧みると崇武は今そのような時にさしかかっているのかとも感じました。彼らの向上心に期待したいと思います。
 最後になりましたが崇武には崇武鎮観光地化計画があり2005年2月までに計画図面ができるそうです。2004年12月2日の新聞によりますとこの計画が正式決定したもようです。2020年までの計画のようですがこのことによって崇武鎮にある工場の移転話に発展しています。確かな情報を収集することはできませんが多数の経営者から聞いた話はそれぞれ見解が違いますので一つずつ列挙します。

@ 2年以内に崇武鎮の全ての石材工場は崇武鎮以外へ移転しなければならない。 政府決定だから逆らうことはできない。  別荘地を作るので環境破壊をする業種は2年以内に、その他の業種は10年以内に移転すること。現実に聯群建材は来年  中に移転するという話です。 聯群建材の話 新工場は湾岸道路をつくるので2005年度中に移転する。すでに移転先に新   工場の建設を進めている。しかし、少し離れた事務所のある旧工場はそんなに早く移転しなくていい。

A 移転はあるがそんなに早い話ではない。 現実的にこの計画には膨大な資金が必要だ。しかし、そんな資金は簡単に出  てこないし本当に実施すると工場閉鎖に追い込まれる企業がでて失業問題にもなる。現実に今も道路を作る計画になっ  ていたが今もって手がつけられていない。実現しても2010年頃だろう。

B 大乍工業区、霞西工業区などの海辺の工業区は2年以内に移転しなければいけないがその他の工業区は関係ない。

C そんな話は初めて聞くが新規に工場建設の許可は下りない。

などなど、どれも真実味があって本当のことはわかりませんが移転があるのは確かのようです。